ペトログリフ (古代岩面彫刻)  

日本人の祖先のように、古代ハワイアンは文字が無かった。しかし彼らは、ハワイ諸島の至る所に散在する溶岩面に奇異な文字の記号、または簡単な人、動物の絵を彫刻している。これらの溶岩彫刻を、考古学者はペトログリフと呼んでいる。
ペトログリフは、歴史の古く開発の遅れているラナイ島やハワイ島、特に南コハラ地区の海岸プアコのあたりのケアペの木々の下の岩床に多く散在しているのが見られる。
いかなる旅行者でも、謎のように不可解なペトログリフを見るとき、古代人の呪詛や怨霊を彷彿とさせるような不気味な霊感を感じる。それらは、古代の人々の文化、歴史、日常の生活情景、習慣などを研究する重要な資料であり、文化的遺産で有るといってよい。特に、固有なポリネシアン文明が、ハワイ諸島でどのようにして変化していったかを調査するのに大切な鍵でもある。
一方、原始芸術愛好家たちは、これらをロック・アート(岩芸術)と呼び、古代の人々の芸術的な表現を観賞し、彼らの近代的な創作のモチーフに使用してりる。
新しくできた、ロイヤル・ワイコロア・ホテル及びリッツ・カールトン・ホテルの近くに有るペトログリフ公園は、その中の重要な場所で、旅行者は自由に古代ハワイアンの遺物を観賞できる。
ペトログリフは、主として海岸近くの大岩石、断崖、また溶岩の原を貴く古い道の休息場によく発見される。
後者は多分、日本の道祖神のように、守護神の神霊を表示し、旅人の安全と急速な旅を助ける為に彫刻されたのものであろうといわれる。また、なかにはその道の休憩場所を通過した旅人の署名であるとも言われている。
ハワイのペトログリフは、タヒチ島やマーケーサス諸島のものとよく似たデザインを表している事から、今から約八〇〇年前に、ハワイアンが巨大なダブル・カヌーで、南方諸島から、渡航してきたとき、ハワイ島に移住してきた事を暗示させる。
現在、これらのペトログリフの彫刻された年代がいつであるか、正確に決定することは困難である。
考古学者たちは、線型の素描が最初古代ハワイアンにより描かれ、次に三角形が考案され、最後に円柱形ができたと主張している。三角形のペトログリフは、ハワイ固有の物で、他のミクロネシア諸島に見られない。
過去二〇〇年、白人のハワイ渡来人は、彼らの服装、家畜、船、武器、所有物を描いた複雑な、新しいペトログリフが、彼らの到着した所に残っていて、イベントの豊富な歴史を語っている。
ペトログリフは、硬い石をノミのように使って溶岩面を削り、また削られたものであり、なかには、古いペトログリフの上に新しいものを削ったものがある。古代中国人が象形文字から漢字を発明したように、古代ハワイアンが象形文字を発明しようとした最初の試し見であろう。
彼らはペトログリフにより、何かその時代の人々を子孫に伝授する言葉のように、表現しようと努力しているようである。

ペトログリフ
は、男女、子供、妊婦、戦士、犬、家畜、鳥、魚、魚釣り、猟、旅行等を明確に描写し、記述している。
ハワイアンは、多くのペトログリフのデザインを入れ墨、家屋、家具、衣装の模様に使ってきた。最近ではTシャツにも盛んに応用されている。

参照
ハワイ・マナ―楽園の風物詩
中野 次郎 (著)
      
Pohaku Hawaiian Stones Na Ki`i Pohaku: A Hawaiian Petroglyph Primer
ハワイの本
RealHawaii